*恋の味[下]*


“ツーッツーッツーッ”

ずっと、機械音が鳴り響く。

携帯の画面には、“通話中”という文字はなくて、待ち受け画面に変わっていた。

そこで改めて確信した。

電話は切られた……と。

………ハハッ…。

私、もう嫌。

ほんっと、お荷物だよ…。

雷斗だけじゃなく、翔にも…。翔だけじゃなく……、倉橋くん、蘭王の方々にも……。

どうすればいいのかさえ、分からない。

「……ぅ……ひっく………」

私の泣き声だけがリビングに響く。

「ただいまー」

タイミングがよいのか、悪いのか微妙なときに帰ってきたな…。

慌てて涙を拭う。

“ガチャ”

「おー……」

あー、電気つけられた。

「お、おかえり!」

なるべく目をあわせずに、自分の部屋に戻ろうとした。

……が、

「ちょ、待て!」

腕をつかまれたせいで、動けない。

「何泣いてんだよ…」

……バレた。

なんで…?

なんで私バレた?

下を向いていた筈。

前髪を弄るフリして、目を隠していた筈。

なのに……。

「泣いて、ないよ」

「うそつけ」

「な、んで……」

「昔と変わってねぇんだよ、下を向いて前髪を弄って泣くのを隠す癖」


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