*恋の味[下]*


プルルル…

『真麻?!』

ワンコールで出たよ…。

「真麻ですが?」

かけたのは翔。

なんでか、彼氏の雷斗よりも幼なじみの翔の方が、着信履歴も受信履歴も、いっぱいだった。

倉橋くんはポツポツ……。

『あーっと…、今出れる?!』

時間は9時。

「んー…、お父さんに聞いてみるよ!」

『了解!』

私は1かい保留ボタンを押して、部屋を出た。

お父さんはリビングで、サッカーのテレビを見ていた。

「いけっ!そこっ!…あー!勿体ねぇ!」

1人で喋ってて、変人にしか見えないー……。

「あの、お父さん?」

「んあ?…おしっ!もう1かい!」

完全サッカーに夢中…。

「お父さんっ!!」

「うおっ、なんだなんだ?」

なんとかお父さんの脳をサッカーから取り戻すことができた。

「あのさー…、今から少し出てきてもいいかな?」

お父さんの顔が険しくなっていくのがわかる。

「……どうしても今からじゃないとダメなのか?相手は誰だ?」

「今からじゃないとダメなの!お願い!」

誰に会うかは、言いづらい。

由良って言う?けど、バレたときは怖い。

雷斗って言ったらマズいし……。

翔とか倉橋くんって言ったら、蘭王に関わっていることが分かる。


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