*恋の味[下]*


中にはいると、そこは外と真反対なくらい、温かかった。

「ふぅー…」

短くため息をつきながら“1”のボタンを押す。

また外に出たら寒いことに違いない。

カバンの中にカイロが入ってなかったか探る。

「あった!」

内ポケットの中に“ポッカイロ〜”と書いてある、カイロを見つけた。

袋をやぶり、シャカシャカと振る。

温かくなれ。早く温かくなれ。

そう願いつつ、ずっと振ってると、1かいについた。

“チーン”

おきまりの音でドアがあく。

ロビーに向かって歩いていくと、

「うっス〜」

「ら、雷斗?!」

マフラーをして、黒のダウンジャケットを着、黒のダメージジーパン、ハイカットという格好をした雷斗がいた。

「どうしたの?!」

慌ててかけよる。

雷斗は私をだきしめながら、

「どうしたもこうしたも、夜に彼女1人で歩かせるバカがどこにいんだよ」

と耳元で言った。

雷斗の体は冷えていた。

「……!…こんな冷たくなるまで!」

私はカバンの中にもう一つカイロがなかったか探る。

んっとー……、あった!

それをすぐさま出して、袋をあけ、雷斗に渡そうとする。

「雷斗!雷斗!1かい起きて!」

そういうと、雷斗は離れ私の手を見た。

「はい、あげる」


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