*恋の味[下]*
「カイロ?」
「そ!カイロ!」
ニコニコ笑いながら雷斗の手に握らせると、雷斗は私の手を掴んで自分のダウンのポケットの中に、私の手を入れた。
「ちょ、なに?」
手を抜こうとしても、抜けない。
雷斗は私の方を向いて、ニカッと笑った。
「こっちのほうが、あったけぇだろ?」
いや、たいして変わらないと思うんだけど……。
と、心の中だけでつぶやく。
「ごめんな、こんな夜に」
マンションから少し離れると、雷斗は眉間にしわをよせ、言った。
「ううんっ!いいよー、全然!」
どうせ暇だったワケだし。
あのマンション、同年代の子いないんだよなー。
あ、知らないだけか。
けど、建ったばかりだし、超高級だから、ただの一般人系はキツいもんなぁ。
いる確率のほうが、十分低いに決まってる。
「そうそう、雷斗ラーメン屋分かるの?」
これで分からないとか言われたら困る!
でも、ラッキーなもんで、
「分かるよ」
私の願いは伝わっていた。
安心安心!
「そっか!じゃ、よろしくお願いします」
丁寧に言うと、「あいよー」とふざけた口調で返ってきた。
はいはい、落ち着け私。