青春時計
「え?紗菜ぢゃん!!!」

あたしはびっくりして顔を上げた

彼はあたしと一度出会ったことを覚えてくれていた

「あ、そっか紗菜入学式の日にぶつかってきたって言ってたもんね」

沙羅が左手にこぶしを乗せてうなずいた


「ぢゃあさ紗菜,はじめましてぢゃ変ぢゃん!!」

奈々が笑いながら言った

「だ、だって覚えてないとおもったんだもん!!」

あたしは恥ずかしくなった

きっと顔もすごく赤かったと思う

こんな自分が信じられなかった


それよりも彼があたしの名前と出会ったことを覚えていてくれて

ただただ単純に嬉しかった

「ぢゃあ、改めて俺の名前は岡本 奏太。よろしくな紗菜」

「あ、うん」

奏太はさっきと同じようなくしゃくしゃの笑顔をあたしに向けてくれた

あたしはまた恥ずかしくなった


初めてだった

男の子の前で恥ずかしくなったり顔が赤くなったりするのは

ただお互い挨拶をしただけなのに・・・


このときはまだこの気持ちが恋なんて気づきもしなかった
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