どうしてしなきゃいけないの?
「君を抱きたいって気持ちに、
性欲が含まれていないかって言われたら、僕は否定できない」
彼女は、ただ黙って僕を見ていた。
僕との関係を拒むときのように、真剣な面持ちで。
「でもね。・・・それだけじゃない、つまり、性欲だけではないのも事実なんだ」
僕は、カバンの中からチラシを取り出した。
今日、歓楽街でもらったそれらは、ちょっとした冊子のような分厚さになっていた。
「君の言うとおり、僕が、君との関係を、
性欲だけで求めているのであれば、僕は躊躇なくこの中から誰かを選んだ」
彼女の表情は、相変わらず硬い。
だけど、僕は構わず続けた。
「だけど、僕は店に入る気にはなれなかった。
確かに、正直に言えば、君より可愛い女の子もいたし、
君より良い体をした女の子もいた。
・・・でも、店に入ろうとすると、何て言えば良いのかな、
空しい気持ちになってしまった」