どうしてしなきゃいけないの？

僕はそこまで言うと、急に恥ずかしくなった。


まともに彼女の顔を見る事が出来なくなって、僕はうつむいてしまった。


僕と彼女の間に漂う沈黙。


ここに来るまで考えていた言葉が、うまく出てきてくれない。


困っている僕の顔に、不意に温かい感触があった。


「・・・まったく、本当にあなたって人は」


驚いて顔を上げようとすると、


触れ合うか触れ合わないか、それくらいの距離に、彼女の顔があった。


僕の両頬には、彼女の手が添えられていた。


「どうして、私じゃなきゃ嫌なの？私より可愛い子は一杯いるのに」


ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべる彼女の顔は、僕の心臓を高鳴らせた。


僕は実感する。


あぁ、彼女が好きなんだ、と。


「・・・多分、僕が思うに、僕は、君と幸せを感じたいんだよ」


その言葉に、彼女はただ微笑むだけだった。


赤く、柔らかい唇に、僕は唇を落とす。


「一緒に、幸せになろうよ」


はにかむ彼女は、僕の顔から手を放すと、たった一言、僕に耳打ちした。


僕はその言葉に、こう答えるだけだった。


「当たり前だよ」と。


すると彼女は、満面の笑みを浮かべた。


「散らかっているけど、上がっても良いよ」と。






付き合って初めて、夜、彼女のアパートに僕は上がった。