どうしてしなきゃいけないの?
行為によって得られる性的快楽なんて、
その言葉だけをとらえれば、あまりに俗っぽくて、
下劣のようなものに聞こえるけど、
でも、それを感じるときの人間の気持ちは、
きっとこの世における絶対的な幸福そのものなんじゃないかって、そう思うんだ。
だけど、その絶対性を構成する要素は、自分一人だけじゃ満たせない。
彼女がいて初めて、僕は絶対的幸福を手に入れることができる。
口先だけの甘い言葉でも足りないし、
快楽を求めて先走る本能だけでもダメなんだ。
彼女を大切にしたいという気持ちと、
彼女を幸せにしたいという気持ち。
これがそろって、初めて、幸せな気持ちになれるのかもしれない。
彼女が淹れてくれたコーヒーは、苦くて、
だけど何故か僕の舌の上では甘い香りに変わっていった。
Fin