とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~
プロローグ



空は高く、白い雲が流れる様子をただ眺めていた。



彼は太陽が眩しくて目を細めた。



自分の真上を旋回する鷲が見える。




何かを狙っているのだろうか…



時折甲高い鳴き声が聞こえる。



前に似たような鳴き声を聞いた事がある気がした。



でも思い出せない。



『…ここは何処だ?』



覚えているのは…



─黒い渦にのまれ…落ちた。



俺は誰かの名を呼んで…



彼女の無事を祈った…




ただそれだけ─





ゆっくり体を起こすと背中に激痛が走った。



その痛みに思わず呻き声をあげる。



身体のあちこちが痛くて思うように動かない。



呼吸を整え辺りを見回す。



微かに水の音が聞こえて顔を上げた。



這う様にその音のする方向へと移動すると水辺に両膝を着いて水を飲んだ。



ふと水面に映った人物に眉を寄せた。



『これは…誰だ?』



水面に映った人物も訝しげに眉を寄せた。



ああ…これは俺か…?



自分の顔を思い出そうとすると背中が激しく痛んだ。



彼は荒い息を繰り返し…


甲高い鷲の鳴き声を聞きながらまた意識を手放した…




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