とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
その表情にユーリは一瞬目を奪われた。
『……なんだ…?』
今まで見たことのないウキョウにユーリは違和感を感じる。
…アイツ、あんな風に笑うんだ…
そう考えてからすぐにハッとしてまたウキョウを追いかけた。
歓声をあげるギャラリーを掻き分けてウキョウが掴み合う二人の間に入った。
丁度男の振り上げた拳がウキョウの顔面に当たる瞬間、ユーリは思わず顔を背けた。
が、ウキョウはそれをスレスレで避けて、逆にその腕を掴むといとも簡単に背負い投げた。
一層大きな歓声があがる。
唖然とするユーリをよそにヒートアップする酔っ払い達をウキョウは一人また一人と昏倒していく。
『にぃちゃんやるな~!』
『スカッとしたぜ!一杯奢らせてくれ!』
そんなギャラリーの男達にウキョウは少し口角を上げた。
口を開けたままのユーリの肩をポンと叩いて『ラッキー』なんて言うウキョウを彼は訝しげに見つめた。
『だ…大丈夫なのか!?』
『急所は外してる。ちょっと伸びてるだけだよ。』
『じゃなくて、お前の方だよ!』
『え?別に大丈夫だけど?』
なにが?と首を傾げながら言うウキョウにユーリはしばらく言葉を失った。