とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
忍のぬくもりが好きだった。
何よりも…誰よりも彼女の側が安心出来た。
だから右京は常に忍を求めた。
…でも…心のどこかで“それは危険だ”と俺は言う。
─何故?
まだ判らない。
右京の記憶の扉はバラバラで、それを開くにはまだパーツが足りない。
「忍…俺って何者…?」
忍はちょっとハニカミながら「私の大切な人」と答えた。
右京は上手く誤魔化されて、少し不満そうな顔をした。
「一つだけ教えてあげる。右京は…両目とも深いグリーンアイだったわ…」
「…えっ?…じゃあ…」
「ううん、あなたは右京よ。間違いない。」
でも自分の右目は気味の悪い深紅をしている。
忍は右京の前髪を掻き上げて瞳を見つめた。
「…私…右目が紅いあなたも知ってるの…。」
右京は黙って忍の言葉の真意を考える。
「…あなたはその右目を嫌ってたわ…」
そっと忍は右京の右目に触れた。
「…どんな姿でも右京は右京なのに…馬鹿ね…」
忍が微笑んだのを見て右京は何となくホッとした。
「…こっから先は自分で思い出しなさい。…あなたの意思で。」
「ん…ありがとう…」
忍の言葉は優しく右京を包んだ。