とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
重くなった空気が気まずくて「気分を変えよう」と言って右京は忍を連れ出した。
「どこまで行くの?」
「俺のお気に入りの場所。」
街から差ほど遠くない森を歩く。
昼間なのに薄暗い。
少し気味悪く感じて忍は右京の腕にしがみついた。
「…相変わらず怖がりなんだ…」
「だって…不気味…じゃない…?」
忍が「お化けが出そう」と呟くと右京は思わず吹き出した。
「強盗には向かってくクセに…」
「強盗は人間だもの!お化けなんかより全然マシよ!」
数年前、離れて暮らす忍が心配で護身術を叩き込んだ。
さすが武道家の血筋というべきか、忍は驚くほど上達した。
「それでも忍は女だよ。自分の力を過信するのは危険だろ?…前にも言った気がするけど…」
「…言われたわね…何度となく…でも今でも毎日ちゃんと稽古してるもの。簡単にはヤられないわ!」
右京は全く引かない忍にやれやれと溜め息をついた。
人一倍正義感の強い忍らしいと言えば忍らしいのだが…。