とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
木の下で寝そべる右京の隣で忍は視線を泉にむけたまま「ねぇ」と話しかけた。
「帰っておいでよ。大学もまだあるし…」
「ん…俺も考えてた。ユーリには散々世話になったな~」
何かお礼が出来ないものか…
ユーリだけではない。ミーシャとコーディにもだ。
そういえばミーシャは俺に気があるんだっけ…?
…そんな事をユーリが言っていたのを思い出した。
正直言って面倒くさい…
全く興味のない女に言い寄られても嬉しくもない。
忍なら大歓迎なのに…
右京が自分をじっと見つめて居るのに気付いて忍が首を傾げた。
その仕草が可愛くてつい頬が緩む。
「忍…可愛い。」
「な…何よ突然…」
「突然じゃないよ。いつも思ってたし…」
「はいはい」
右京の言葉にプイッと顔を背けた忍に腕を伸ばしてグイと引っ張った。
忍は体勢を崩して右京の身体の上に倒れ込む。
真下にあるオッドアイに見つめられ赤くなる彼女に右京は微笑んだ。
「今思ったんだけど、記憶を無くしていいことがあったよ。」
「なに?」
首を捻る忍に右京は目を細めながら口を開いた。