とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




ただ見られただけなら良かった。



かなりいいムードになり、あと少しで忍の服を脱がすって時になってニックの『いい眺めだねー』と言う声が聞こえたのだ。



つまりそれまでの一部始終を見られていた訳で、本気で恥ずかしかった。



ガックリ項垂れる右京達を見てニックとユーリは腹を抱えて笑った。



…腹を抱えて笑っているのは今も同じか…




『悪かったよ!…ってか右京でも盛るんだな!』



『人をケダモノみたいに言うのやめてくれ…』




だがその出来事で右京はまた一つ無くした過去を思い出した。



それは日本に居る頃よく親代わりだった祖父に忍との仲を邪魔されていた日常だった。



祖父を右京は“師範”と呼んでいた。



師範はかなりの高齢のはずなのに人間離れした強さでいつも負かされていた。



…何度か勝った事もあったな…



─なんで勝てたんだっけ?




思い出せない。



多分、運が良かったんだろう。




ビールを煽るユーリを眺めると自分もジョッキに手をかけた。




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