とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
◇◇◇◇◇◇◇◇
ミーシャはベットに仰向けになりながら窓から見える月を眺めていた。
時折雲に隠れてその度に辺りを闇へと変える。
だが暫くするとまた月が顔を出し、辺りを照らす。
陰と陽を繰り返す月の表情をぼんやりと見ていると入口で物音が聞こえた。
─…帰って来た…
ドアの向こう側から聞こえる話し声に耳を澄ます。
ボソボソと話すその声が右京だと判るとそれだけでドキドキした。
自分の部屋の前を通り過ぎたかと思うと、今度は物凄い大きな音が聞こえた。
さすがにそれを無視出来なくてミーシャは部屋の扉を開けた。
『…大丈夫?』
『ゴメン!起こした?…コレ落としちゃって…』
“コレ”と言って指差したのは廊下に大の字で倒れたユーリだ。
右京はその足をむんずと掴んでズリズリと引きずって部屋の中に消えた。
あまりにも豪快な運び方にあんぐりと口を開けたまま見ていた。
部屋の中からゴンッ!とかガンッ!とか『いてッ!』とか聞こえて、しばらくすると涼しい顔をして右京が出てきた。
『だ…大丈夫…なの?』
『ん。大丈夫だろ…』
…怖くて部屋を覗けない…
右京は『喉渇いた~!』とダイニングへと歩いて行った。