とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
すれ違う時にお酒の匂いがして、それが右京を余計大人っぽく感じさせた。
…チャンス…なんじゃない?
今この家で起きているのは自分と右京だけだ。
そう思うとドキドキした。
ミーシャはゴクリと唾を飲んで右京の後を追った。
暗いキッチンで水を飲む右京の後ろ姿を見つけた。
『ウ…ウキョウ』
『ん~?』
『あ…あのね…話があるの…』
『…なに?』
振り返った右京が自分を見ているのが判るが、暗くて表情は判らない。
でも自分の表情も右京に悟られなくて済む。
ミーシャは緊張して汗ばむ手に力を入れて深呼吸を一つした。
『私ね…好きな人が居るの…』
『…へぇ…』
『でも…その人には好きな人が居るの…』
そこで一呼吸置くと右京がダイニングの椅子に腰を下ろした。
『…それで?』
『そ…それでね…私…人を好きになったのって初めてで…こんな気持ちになれる人、他にいないと思うの…』
『…初恋?』
『うん…』
『…そっか…俺さ~初恋しか知らないからアドバイス出来ないよ?』
『………えっ?』
思わずたっぷり間を空けてそう言ったミーシャを右京が笑った。