とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
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右京の隣を歩く忍は彼の様子が何処と無くおかしい事に気付いた。
それは一番近くで過ごして来た忍だから気付く、ホントに些細な違いなのだが…
例えば繋いでいる手がいつもより少し力強いとか、自分を見つめる回数が多いとか、そんな普通の人なら見逃してしまうような所に違和感を感じたのだ。
右京の口から話してくれるのを待っていたが、一向にその気配がない。
忍は足を止めて「右京。」と彼に声をかけた。
「なに?疲れた?」
「大丈夫。それより…言いたい事があるなら言いなさいよ。」
「…どうしたの、急に…」
「…私が気付かないと思ってるの?」
右京は小さく溜め息をついて「少し休もう」と道端の岩に腰を下ろした。
忍は右京の正面に仁王立ちして腕を組んだ。
まるで何処からでもかかって来い!とでも言うような、“戦闘態勢”である。
右京はそんな忍を見て小さく笑った。
「…怖いな…お前って超能力でもあるの?」
「誰かと一緒にしないでくれる?…でなんなの?」
右京は忍の手を取って下から彼女を見上げて「昨日さ…」と話し出した。