とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
あの日…あの時の想いと記憶が交錯する。
─俺は忍を守りたかった…。
自分が傷付く事より、彼女が巻き添えになる事を恐れた。
俺の背負っている宿命的な“それ”のせいでまた彼女が危険に晒されるかもしれない。
そんな不安を消したかった。
薄れ逝く意識の中で俺は考えた。
どうしたら彼女が安全に暮らせるか…
─俺が彼女の前から消えればいい…
そして、
─俺も消えてしまえばいい…
だから俺は一切の記憶を封じたんだ…
「…俺が無くしたのは記憶と…
…“翼”…」
右京の言葉に忍は目を剥く。
「…忍…俺は思い出すべきじゃなかったのかもしれない…」
「やめて!!…お願い…無かった事にしないで…」
忍は右京にすがり付く様に抱き締めた。
「私の気持ちはどうなるのよ!私は…っ…ふ」
泣きながら叫ぶ忍の唇を強引奪う。
噛み付くような右京のキス…
乱暴なのに唇は優しく…強引なのに愛を感じる…そんなキスだった。
「ゴメン、忍…ゴメン…」
ゴメンと繰り返す右京。
何に対する“ゴメン”なの…?
忍はそう聞こうと思ったが、答えを考えると怖く聞けなかった。