とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
悲しそうに笑うと彼女は右京の頬を撫でた。
「もう置いてかないで…?一番近くに居たいよ」
忍は囁きに右京は涙の跡をなぞる指を止めて優しく微笑んだ。
「ずっと一緒に居れたらいいのにな…」
その言葉はまるで「一緒には居れないんだ」と言ってるように聞こえて忍は辛かった。
「さっきは放さないって言ってたのに…」
コツンと額を付けて口を尖らせる忍に右京は「放さないよ。」とシレッとして嘯く。
コロコロ変わる右京の言動に忍は「嘘クサイ」と茶化して笑った。
「いいよ、右京が何処へ行ったってまた見つけ出すもん!」
「相変わらず無鉄砲だね…」
呆れてそう言ってみたけど、内心は嬉しくて仕方なかった。
こんな状況なのに今すぐ彼女をどうにかしてしまいたい衝動に駆られる。
「場所がこんな所じゃなかったら忍を襲うんだけどなぁ~」
はぁと溜め息をついて項垂れる右京を見て忍が吹き出した。
「私は右京と違って何処にも行かないわよ!…とりあえず“気晴らし“しない?」
「…“気晴らし”?」
首を傾げる右京に忍は微笑んで飛び起きた。
「私と手合わせするのよ!ほら、立って!」
忍は右京の腕を掴んで引き起こした。