とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





構える忍を見て右京はガックリと項垂れる。



「…ムードもクソもねぇな…」



ポツリと愚痴を溢しながら右京も諦めて構えた。




忍はニッと口角を上げると一歩踏み込んで足を振り上げる。



右京は避けずにそれを素手で受け止めた。



右京はフッと目を細めたかと思うと体勢を急に落とした。



忍はそれに気付いて咄嗟に上体を反らす。


胸すれすれを右京の長い足が空を切った。




「おっ…いい反応だな…」



「毎日稽古は欠かしてないからね!」



ふ~んと返事をしながら右京拳を繰り出す。



忍はソレを掴んで懐に入り込むと、右京を背負い投げる体勢に入った。



「…あれ?…」




全くビクともしない。




右京はそのまま忍を羽交い締めにすると彼女の耳に顔を近づけた。



「いい匂いがする…」



右京の心地よく低い声に一瞬ドクンと鼓動が高鳴った。



それを見て右京はクスッと笑うとそのまま耳たぶをカプッと甘噛みする。



忍が「ひゃっ…!?」と小さく悲鳴をあげた。




「…早く振りほどかないと大変な事になるぜ?」



耳元で囁く右京の色っぽい声に動揺してしまった自分を嫌悪する。



右京はわざと挑発するように忍の首筋を舐めた。



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