とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
シャワーを浴びて鏡に自分を映す。
長い銀色の前髪から覗く深紅の瞳が不気味だ。
こんなヤツに喰われても構わないと忍は言った。
─冗談じゃない…!
一瞬苛立ちが爆発してパンッ!と音をたてて鏡が割れた。
「…!?…俺?」
右京は自分の手の平に視線を落とす。
─“力”が…戻って来てる…
「なんの音!?」
慌ててドアを開けた忍は鏡の前で呆然とする右京と目が合う。
「…“力”が…」
忍は溜め息をつくとバスタオルを右京の頭に被せた。
「…今更“力”くらいじゃ驚かないわよ。」
忍は右京の髪をぐしゃぐしゃと拭きながら「怪我はない?」と聞く。
「…なんで俺の心配してんの?」
「なんでって…」
「俺より自分の心配するべきじゃない?…こんな気味悪いヤツと居て…」
右京らしくない言動に忍が眉を寄せた。
「…何言ってんの?気味なんて悪く無いわよ?」
「お前こそ何言ってんだよ…人間でもない…天使でも堕天使でもない、こんなヤツ…」
忍は右京を睨み付けると思いっきり頬をひっぱたいた。
「いい加減にしなさいよ!まるで子供の台詞じゃない!?」
ポロポロと泣き出した忍を見て右京はツラいのは自分だけじゃなかったのに気付く。