とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「…ごめん…ごめんね、忍…」
震える細い身体を抱き寄せる。
「…もう…そんな風に言わないで…」
自分の胸に頬を埋めて彼女は小さく呟いた。
こんな得体の知れない自分を必要としてくれる忍が愛しく、右京にとってかけがえのない存在だと改めて実感する。
「…忍…?」
ベットの上で寄り添い、微睡む忍に右京は話しかける。
「…愛してるよ…」
忍は目を閉じたまま微笑んで「知ってる」と答えた。
「…忍…」
「なに?」
「…ありがとう…傍に居てくれて…」
「それ…私の台詞…」
右京は「違う、俺の台詞だよ」と幸せそうに微笑んだ。
「…右京…」
「ん~?」
「…抱いて…」
前までなら喜んで応えただろう。
だけど今は躊躇してしまう。
「…どうすんの?俺がまた暴走したら…」
「大丈夫よ。私が止めてあげる。」
右京はゆっくり身体を起こして忍を真上から見下ろして彼女の頬を撫でた。
「…もし…俺がおかしくなったら…殴るか噛み付くかして?」
そう言って忍の肌に舌を這わせた。
その夜、右京が暴走する事は無かった。