とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
頭に来て言い返してしまってからジンヤは“しまった!”と後悔した。
こっちは独り。相手5人…
どう考えても勝ち目はない。
向かって来る男のパンチを避けて鳩尾を膝で蹴り上げたまでは良かった。
だが加戦したヤツの右ストレートが案の定ジンヤの顎にヒットして彼は吹っ飛んだ。
─痛ってぇ…
呻きながら身体を起こした時、辺りに生暖かい突風が吹き抜けた。
その風に思わず目を閉じると「うわっ!?」と言う相手の声に無理矢理片目を開いた。
─…えっ?…誰?
自分の真ん前にパーカーのフードを被った長身が目に入る。
ジンヤはその男の足の長さに唖然とした。
…超なげぇ…黒崎さん並じゃないか?
パーカーの男は「邪魔なんだよ!!」と殴り掛かって来る若者の拳を身を捻ってヒラリとかわした。
その一瞬見えた横顔にジンヤは目を見開いた。
フードの下の銀髪が揺れ、ニヤリッと笑う様につり上がる口角…
目元は見えないがまるで舞うように一人、また一人と男を伸していくその長身にジンヤは声が出なかった。
結局その長身の男は指一本触れずに5人をあっという間にねじ伏せた。