とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
口を開けたままのジンヤを男は振り返って見下ろす。
「大丈夫か?」
「あ…あんた…」
そう言いかけた時、「ちょっと!何で置いてくのよ!」と怒った様な女の声が聞こえて視線をそちらに向けた。
「…あれ?ジンヤ君?」
「…忍さん…?」
「なんだ、知り合いか。」
その言葉にジンヤは首を捻った。
「…黒崎さん…じゃない?」
「あ~…なるほど。“黒崎右京”なら死んだよ。」
「…えっ?」
ニヤリッと笑う男に忍はツカツカと歩み寄ると、バシッと男をひっぱたいた。
「何笑えないジョーク言ってんのよ!」
「えー…笑えない?ジョークも忘れてんのかな、俺…」
「ったく…ジンヤ君、本物の右京だから安心して!…ちょっとおかしいけど…」
「忍ぅ~…彼氏に向かって“おかしい”とか…凹むんだけど…」
首に手を当てながら右京は溜め息をつく。
そんな様子を終始見ていたジンヤは目を潤ませて右京に抱き付いた。
「黒崎さん!!…会いたかったっすよ~~!」
「お…おぅ、そうか…。で…お前誰だっけ?」
「えっ?…えええええええええッ!?」
ジンヤは悲痛の叫びを上げ、悪気の無さそうな笑みを浮かべる右京に泣きながらすがり付くのだった。