とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「で?実際記憶の方はどうなんだ?」
「ある程度なら戻ったよ。日常的な事はね。ただジン…ヤみたいにまだの部分もまだあるな~」
ガクは少し身を屈めて右京に顔を近付けた。
「“力”の方は?」
「風は問題ない。ただパイロキネシスが上手く制御出来なくてさ…」
「…こないだ家が火事になりそうになったわ…」
「火事は大袈裟だろ~?ちょっと爆発起こしただけじゃん…」
爆発も十分惨事だ…とガクは思った。
「なるほど…まぁ、とりあえずそっちも健在って事だな…」
「皮肉な事にな…」
右京の表情が一瞬陰る。
ガクはそれに気付かないフリをして声のトーンを上げた。
「いつイギリスに行くんだ?」
「9月だな。とりあえず一年は向こうの予定だけど…まぁ、何度か帰って来るよ。」
それまでの数ヶ月は日本に居ると話すと、ガクは店に入って欲しいと言ってくれた。
稼ぎたい右京にとっては有難い話だった。
「じゃあ、忍ちゃんには悪いけど時々コイツ借りるよ。」
「どーぞどーぞ!コキ使ってやって!」
「ここ最近、若い連中が元気良すぎてね…店の手伝いっていうより“守護神”として頼みたいんだ。」
ガクの言葉に右京は「なるほど。」と頷いた。