とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
◇◇◇◇◇◇◇◇
開け放った窓から流れ込む夜風は、汗ばむ肌を少しずつ冷やす。
右京は窓辺に腰掛けて机の上に置かれたタバコに手を伸ばした。
普段吸わないタバコを吸う右京を忍はベットの上からぼんやり眺める。
セントルシアの酒場で覚えたらしいタバコを美味しそうにふかす右京は、何だかいつも以上に色気があってちょっとドキッとした。
「…悔しいなぁ…」
ポツリと呟いた忍を右京は振り返って「何が?」と紅い瞳で見つめた。
「また右京のペースにはまった…」
「ぷッ…忍もまだまだだねぇ」
多分彼に敵う事はないだろう。
それは自分に限らず誰であっても“右京には勝てない”と思う。
「夜景は見れたろ?」
「見れたけど…この状況が納得いかないの!」
「あ~なるほど。」
伏せ目がちに微笑む右京に忍は小さく溜め息をついて枕に顔を埋めた。
タバコをもみ消した右京はベットに腰掛けて忍の背中に心地よいキスを落とした。
「Axelでバイト始めたら、多分二人の時間が減るだろ?だから…」
再び忍の背中に唇を這わせると、腰の辺りにチクッと甘い痛みを残す。
自分の付けた印をペロッと舐めて「甘い」と囁いた。