とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
村はずれにある教会はとても小さく、十字架が掲げられていなかったらそれとわからないような建物だった。
記憶のないウキョウにコーディが色々説明してくれたが、どの話にもピンと来ない。
静かに教会内に入って二人が後方の席に着いた時、一段高い位置に司祭が出て来たのが見えた。
司祭の説教が始まり、みんなが耳を傾けている。
ウキョウも真似してそれを黙って聞いていた。
“神は我々の行いを見ている”とか、そんなような話だったが正直違和感を覚えただけだった。
…やっぱりカトリックじゃねーな…俺。
そう思うと説教すら興味が無くなってしまった。
ウキョウは教会内を見渡す。
『コーディ…あれってなんだっけ?』
『え?あれって?イエス様だろ?』
『イエス様…』
『勘弁してよ、ウキョウ!幾ら記憶が無いからって“イエス・キリスト”を忘れちゃ駄目だよ!』
イエス…キリスト…?
そうだ、イエス・キリストだ。
自らの担いだ十字架に張り付けられて死んだ人間。
前に見たことがある。
『イエス様は神の子だよ。』
『イエスが…神の子だって?』
─違う。
─イエスは神の子ではない。
そう思った次の瞬間、背中に激痛が走った。