とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ゴウの目を盗んでまた戻ってきた右京は「おごり」と言ってグラスビールを置いて行った。
「とりあえず、乾杯!」
三人は仕事の話で盛り上がっていたが、恋愛の話になるとちょっとトーンダウンし始めた。
右京は忍に「ボックス席、空いたよ」と声を掛けて移動させた。
「お前ってさ…彼女には気が回るのな…」
「紳士たるもの、当然デスヨ。」
ゴウにそう答えると「イチイチむかつく」と言ってオーダーを何枚か投げつけた。
注文が落ち着くとゴウと並んでボックス席の忍を観察する。
「女子会ってやつ?」
「…俺も仲間に入りたい。」
「空気読めよ…ウザがられるだけだぜ?」
ゴウの言葉にムッと口を尖らせると、右京はタバコに火を付けた。
確かにゴウの言う通りなのだが、右京としては出来る事なら忍の側に居たかった。
女三人ってだけで男が寄って来るのだから。
「…何度目だよ…」
「大丈夫だって。見てな…」
声をかけた男のツレが慌てて何かを言いに来て、忍達から離れて行った。
「な?この店にいる限り、お前が心配する様な事はねぇよ。」
「そうか…」
本人が気付いてるかどうか判らないが、銀の修羅の異名を持つ右京の女に手を出そうなんて輩はほとんどいない。