とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京は「いつだったかな~」と話し出した。
「この前、寛二とその彼女が店に来たんだよ。」
「ええっ!?」
「寛二も俺が居るの知らなかったみたいでびびってたよ!」
クスクスと笑う右京に忍は眉を寄せた。
「クミの事、何か言ってた?」
「いや?…彼女の手前、クミの名前が出せなかったのかもな…」
忍は少しガッカリしたように肩を落とした。
「なんで忍がガッカリすんの?」
「だって、クミかなりショック受けてたもん…」
「…まだ未練あるって?」
そう聞くと忍は俯いて首を振った。
その様子に右京は「ねぇ、忍…」と肩を抱き寄せた。
「本人同士にしか判らない事があるだろ?…俺と忍だけしか知らない事だってあるし…」
「…そうね…」
「実際、クミがお前達に話した事も、寛二から聞いたら違うかもしれない。」
「…クミが嘘付いてるって事!?」
忍がムッとして右京を見上げた。
右京は「そうじゃないよ」と微笑んだ。
「人って個人の価値観とかがある訳じゃん?クミの価値観と寛二の価値観が違うって事。」
「…言ってる事は判るけど…なんかヤダな…認めたくない。」