とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ハッとして右京は飛び起きる。
「…夢…?」
額に手を当てて項垂れる。
「…なんで…すぐ喰おうとすんだよ…」
夢の中の自分…いや、過去の自分に腹が立つ。
右京は自分の中には“怪物”が居ると思った。
そいつは事あるごとにひょっこり顔を出して暴れ出す。
一番近くに居た忍はかなり危険だったはずだ。
─傍に居たいのに離れたい…
複雑な感情を抱えながらも、“触れたい”“繋がっていたい”という欲望は抑えられなかった。
右京の中の怪物が暴れる度、忍の悲痛な叫びを聞く羽目になる。
幸せな瞬間が一瞬で崩れるのだ。
右京ベットから這い出てカーテンを開けた。
右京の気分に反して、外は快晴だった。
大学近くにある教会まで良く見渡せる。
伸びをしながら時計に目を移すと7時半を過ぎた辺りだった。
裸足のままダラダラと部屋の扉を開ける。
『おはよう。クロウ!』
『…やぁ、ニック…仕事?』
『ああ、原稿を仕上げてる。…コーヒー飲むか?』
右京は欠伸をしながら『ありがとう』とバスルームへ向かう。
昨日イギリスに着いたばかりで、時差ボケで回らない頭をスッキリさせたかった。