とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~



だが、虎太郎の性格からして相当心配していただろう事は容易く想像出来た。



本来なら挨拶くらいは行べきなのだが、今の右京にはその術がない。




トランクス一枚で頭にタオルを被ってバスルームから出て来た右京は、ニックのいれてくれたコーヒーに口を付けた。



ニックの仕事用であるアパートをまるで自分の家の様に裸足でペタペタと歩き回る。



そんな右京をニックは解せないと言いたげに目で追う。




バルコニーの窓辺に座って右京は空を見上げた。



『…遅いな…』



『え?誰か来るのかい?』



『バージが帰って来ない。』



『あ~あの鷲か…』



『バージは鷲じゃない。バジリスクだ。』



『ここで鷲なんて見かけたら即噂になるだろうな…』



『確かに…。っていうか鷲じゃ…まぁいいや…』




右京はいちいち否定するのも面倒になって溜め息をついてバルコニーに寄りかかった。



『…いっそ人間の方が目立たないか…』



『なんの話だ?』



『バジリスクだよ。』



『まぁ…鷲より人間の方が良く見掛けるけど?』



右京はコーヒーを飲みながら『だよな』と頷いた。



─潤に頼んでバジリスクに人間の姿で来るように伝言を頼むか…



ちょっと考えてからその考えを“駄目だ”と却下する。



潤には忍についていて欲しい。




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