とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
今日だけで“災難”という単語を何回聞いただろうか…?
右京の顔を見る度にみんな『災難だったな』と言うのだ。
人の噂とは怖いもので、人伝に大きくなった話は尾ひれを付けて勝手に泳ぎ出す。
一番酷かったのは『右京が事故で危篤になって今も昏睡状態だ』というものだ。
その話を真に受けていた学生は右京を見て目の前で失神して大騒ぎになった。
右京はこの状況の方がよっぽど“災難”だと思った。
『あああ~癒されたい!!忍に会いたい!!』
『…もうホームシックか?』
『なんとでも言え!今の俺には忍が足りないんだよ!』
『…あんだけエロい身体にされて、まだ足りないのかよ…』
ニックの言葉を無視して右京は携帯を取り出すと忍に電話をかけた。
「…もしもし…?」
「忍!?俺~。今何してた?」
「何って…いま夜中の2時よ?…寝てたに決まってるじゃない…」
「つれないなぁ…折角電話したのに…嬉しくないの!?」
「…嬉しいけど…明日にして…私寝るから…」
一方的に切られて癇癪を起こした右京は携帯を放り投げた。
一瞬それを見て唖然としたニックだったが、次の瞬間ゲラゲラと笑い出した。