とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
入口の監視カメラに視線を向けると分厚く頑丈な扉の鍵が開く音が聞こえた。
その扉を開いたニックは『おかえり』と言って口角を上げた。
『クロウ!やっと来たか~!!』
豪快に笑いながら抱き付くロイに『ああ、遅くなってすまなかった』と右京も笑った。
『おかえり、クロウ。』
懐かしい凛としたボスの声。
『ただいま…アラン。』
差し出された手を握り返し、ホッとして目頭が熱くなった。
…が、次にアランが口にした言葉に右京の思考は停止する。
『ここ数日の間、君を監視させて貰ったよ。』
『……なに…?』
『以前の君と同じか…少し不安になってね…』
毎度ながら鋭いアランの指摘に一瞬言葉に詰まる。
『…で?同じだったか?』
『ほぼね。…多少疑わしいが、問題ないと判断したよ。』
それは“まだ疑わしい”という事だろう。
強ち間違っていないだけに反論する気にもなれない。
『…どうする?暴走したら…。お前らなんか一捻りだぜ?』
『だろうな…安心しろ。俺も馬鹿じゃない。ちゃんと“保険”をかけている。』
『保険…?』
首を傾げる右京にアランはニッコリと笑った。