とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
アランはロイを振り返って『“彼”は?』と聞いた。
『さっき連絡した。すぐに来ると思う。』
誰の事を言ってるのか判らずニックを見ると『悪く思うなよ』と肩を竦めた。
─何を言ってんだ?
もし自分が暴走したとして、誰がそれを止められると言うのだろう。
アランは『そんな顔すんな』と右京に口角をあげる。
『今すぐどうこうしようなんて思ってない。何より、君は俺達の仲間だ。…あくまでも“もしも”の場合だ。』
『それは正しい判断だとは思うが…そいつに俺が止められるのか?』
『さあね。…だが、俺達よりは明らかに役に立つ。』
眼鏡の奥の瞳が鋭く光った様な気がした。
『ところで、そう言うって事はやはりその可能があるって思っていいのかな?』
『…“もしも”の話だよ。なんせこの目だからな。』
そう言って前髪をかき挙げて紅い右目を見せた。
アランはそれを見て少し驚いた表情をした。
『…なるほど。記憶が戻ってから今までにおかしな事はあったか?』
『おかしな事があったかだって?…おかしな事だらけだ!』
悔しげに自分の拳を睨む右京に『そう自分を責めるな』とロイが声をかけた。