とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
スクリーンに表示されたこの辺り一帯の地図に目を向ける。
『半年の間にあった少女失踪事件のうち、不可解な物は23件。』
『さっきニックが言ってたヤツ?』
『ああ、そうだ。捜索願が極端に遅く、無事に少女が帰って来た事件の事だ。』
ニックはクリスにも判る様にそう補足した。
アランは頷くと『そして…』と先を続ける。
『彼女らが失踪したのが赤いマークの場所だ。』
地図にポツポツとマークが表れる様子を右京は注意深く見詰めた。
『…妙だな…』
右京の呟きにクリスがチラッとこっちを見た。
『…何が?』
『統一性も無ければパターン性も無い…誘拐じゃないのか?』
誘拐だとすれば、ただ無作為に犯行を重ねたとしか考えられない。
単なる家出の類いなのだろうか…
…いや、ただの家出なら“記憶の欠落”を説明出来ない。
やはり何者かが裏に居る…!
それまで黙っていたクリスがふと口を開いた。
『少女の写真はあるか?顔がみたい。』
『ああ。一人目の少女は15歳、市内の一軒家に住む普通の子だ。』
ロイがモニターにまだ幼さの残る少女の写真を表示させた。