とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
それを教えてくれたのはグレイという青年だった。
彼もまた“クルースニク”で昔はクリスと同じように試練を受けたらしい。
“情を挟むな。非情になれ”
それがグレイの口癖だった。
最初のうちは武器である銃の扱い方を学んだ。
普段手にできない物だけに、クリスは熱心にグレイの言う事を覚えた。
だが、そのうち実技を教わる様になるとクリスは気が重かった。
何故なら、最初は動かない空き缶が的だったが、慣れてくるとそれがウサギへと変わったからだ。
“ハンター”としては動いている物を捕らえられなくては意味がないので仕方ないのだが、生きている物を殺す行為が怖くなった。
『言ったはずだ。“情を挟むな。非情になれ。”』
『だけど、あのウサギはまだ生きている!やだよ、そんなの!』
『クリス…俺達は時に仲間を殺らなくてはならない時がある。…情を挟んだら“クルースニク”として失格だ。』
ポロポロと涙を流すクリスをグレイは冷たく見下ろす。
『殺れ。』
『やだ!』
『お前が殺らなかったら皆が死ぬぞ。…殺れ。』
そう言われて泣きながら銃を構える。