とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
銃口をウサギへと向ける。
『よく狙え。一発で仕留めろ…頭をぶち抜け!』
冷酷なグレイの言葉を聞きながらクリスはウサギに狙いを定めた。
─引金を引いたとき…
ウサギが自分を見た─
真っ赤になって吹っ飛んだ物体を見てクリスはガクッと両手をついて嘔吐した。
そんなクリスにグレイは『上出来だ』と言った。
『ウサギごときで吐いていたら“敵”は殺れない。“非情になれ。”』
─“ウサギごとき”…
グレイのその言葉がぐるぐると頭の中を回る。
クリスは初めて“クルースニク”としての宿命を恨んだ。
『なんで…なんで僕が…!』
家で塞ぎ込むクリスに父親は心配して時々部屋を訪れた。
『お前にばっか辛い思いをさせてごめんな…』
父親のそんな言葉にクリスは思いっきり泣いた。
母親は相変わらず『あなたは誇りよ』と繰り返し、クリスの苦しみには無関心だった。
本当に自分の事を考えてくれていたのは父親の方だった。
それに気付いたその日からクリスは母親とあまり話さなくなった。
そうして15歳になったある日、クリスはグレイの任務に同行した。
そして初めて本物の“敵”を目にした。