とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『…あれが“敵”…?』
『そうだ。あれが俺達が狩るべき“敵”だ。』
キッパリそう言い放つとグレイは躊躇なく銃口を“敵”に向けた。
『ま…待ってよ!あれは…“人間”じゃないか!!』
ゆらりと暗闇に蠢く影は紛れもなく人間だった。
『見た目に惑わされるな。あれは“ストリゴイ”だ。…牧師から教わっただろ?』
確かに教わった。
“ストリゴイ”は下級吸血鬼…
主に吸血鬼には“ストリゴイ”、“ヴコドラク”、“クドラク”の三階級に別けられている…と。
『“ストリゴイ”は“ヴコドラク”か“クドラク”が作り出した下級吸血鬼だ。もう人間ではない。』
グレイの言う通りだ。
“ストリゴイ”になった時点でその人間は既に死んだも同然…。
自我はなくただ家畜や人間を貪る化物だ。
現に今も家畜の牛を食い千切り、血塗れの状態でクリス達を見ている。
『…“情を挟むな。”』
グレイは“ストリゴイ”に引金を引いた。
─ズガァァン…!
クリスは脳天を撃ち抜かれ血飛沫を上げて崩れる“ストリゴイ”をただ呆然と見ていた。
『…“非情になれ。”』
下級吸血鬼はやがて灰になり、風と共に消えた…