とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バジリスクは紅茶を淹れながら簡潔に、且つ淡々と報告した。
『まず、ルシファー側の動きは今のところ目立ったものはないとおっしゃっていました。』
『こっちもこれだけ痛手を受けたんだ。向こうだってそこそこ堪えてるだろう…。』
『はい。基本的に悪魔は命が無ければ、自発的に活動はしない輩が殆どですから…。』
右京は頷いて紅茶を一口飲んだ。
『それと、マスターについてですが…天界で天使及び堕天使としての地位を剥奪する方向で話が進んでいるらしいです。』
『ついに動いたか…ラファエルか?』
『恐らく…。』
『相変わらず汚ねぇ野郎だ。まぁいい。別に地位は要らないし…。』
バジリスクは『そうおっしゃると思いました。』と溜め息をついた。
『ですが、ハニエル様はそれが不服のようで、神に掛け合うとおっしゃって…』
『“神”!?…神ってラーにか!?』
右京の主である神は“アメン・ラー”と呼ばれる天空と太陽の神だ。
神々の中でも権力がそこそこあるからこそ、自分のワガママも他の神からとやかく言われる事が無かった。
だが役立たずと化した自分に失望していたとしてもおかしくない。
その上にその役立たずを庇う言動をするように掛け合うなんて…
右京はガシガシと銀髪を掻くとバジリスクに目を向けた。