とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バジリスクは右京が口を開く前に『私は言いました』と言葉を発した。
『マスターがそれを望まないだろうと…。ですが、ハニエル様としては大変な遺憾の様で…』
『筋金入りの馬鹿だな…。…仕方ない。バージ、頼みがある。』
バジリスクは『はい、何なりと』と真っ直ぐ右京を見た。
『アイツに“天使の定義はなんだ”と伝えろ。』
『…手遅れだったらどうしますか?』
右京少し考えてから顔を上げた。
『ハニエルの主に掛け合え。』
『イシス様ですか…』
珍しく露骨に嫌な顔をしたバジリスクを訝しげに見る。
『いえ…私はイシス様に嫌われてますから…。』
女神イシスは基本的に自分より美人には冷たい。
バジリスクの分際にも関わらずこれだけの美貌を持つ彼女は、それこそ目の敵である。
『ただの嫉妬だ。気にする必要ない。』
『…はい。わかりました…』
『そんな顔すんな!落ち着いたらどっか連れてってやるから!』
不貞腐れ気味のバジリスクをそう宥めると、彼女は嬉しそうに目を輝かせた。
『マスターは?』
『俺はちょっとやる事がある。』
そうして“狩り”への準備に取り掛かるのだった。
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