とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京はバジリスクのいるテーブルを気にしながらカウンターへと向かった。
『あら、いい男…。どお?一杯奢るわよ?』
『…いや、要らない。』
素っ気なく女にそう言うとカウンターにビールを注文した。
遠目にバジリスクの様子を伺う。
右京が離れた途端に群がる男達。
『何あの娘…見ない顔ね…』
右京の隣で女は面白く無さそうに呟いた。
─マスター…人間じゃない者が居ます。
─ターゲットか?
─…たぶん違います。
右京はグラスに口を付けながら暫し考え込んだ。
チラッと隣の女に目を向ける。
『…お前、ここの常連?』
『ええ。週の半分はこの店に居るわ。』
『…あの娘に群がってる男達も常連か?』
女はバジリスクを取り巻く男達を眺めて『ええ。見たことあるわ』と答えた。
『あれ…?…おかしいわね…ティムは確かゲイだと思ってたけど…バイだったのかしら…?』
女の台詞に右京は無言でその男を睨む。