とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
それからフラフラの男について歩くこと10分。
緩やかな登り坂を行くと雑木林が見えた。
微かに空気の密度が変わった気がした。
しばらく辺りの様子みていたが何かおかしい。
バジリスクはピタリと足を止めた。
─マスター…?
……
……
…返事がない。
やはり“結界”だったと気付いたがバンパイアの男がこちらを睨む様に見ていた。
右京の言葉を思い出す。
彼はこの男についていけと言った。
それに自分には“ハッシンキ”が付いてる。
もしかしたら気配は結界に遮られるかもしれないが、“ハッシンキ”は有効かもしれない。
『ハァハァ…怖がる事はない…すぐに気持ち良くなれる…』
粘り付くような声でそう言う男が口角を上げた。
“怖がる”…?
バジリスクは思わずプッと吹き出した。
『怖くなんかないわ。…気持ち良くなれるんでしょ?』
そう切り返して再び男を追って歩き出した。
そんなバジリスクを見て男は鋭く尖った歯を見せてニヤリッと笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇