とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ビルの谷間を移動していく男とバジリスクを屋上の縁に立って見下ろす。
『クリス、追うぞ。』
『ああ。ちょっと待ってくれ。』
ライフルのストラップを肩にかけ階段に続く扉へ向かう。
『おい、何処へ行くんだ?』
『何処って…追うんだろ?』
首を傾げたクリスに右京は溜め息をついた。
『いちいち降りてたら時間の無駄だろ?…跳び移った方が早い。』
シレッと言う右京に『正気か!?』とクリスは眉を寄せた。
『クリス~…“クルースニク”だろ!?普通の人間よりかは身体能力高いんじゃねぇの?』
『まぁ…そうだが…』
『来いよ。…手貸すから。』
クリスは一瞬躊躇したが意を決して右京へ近付いた。
右京は両手を組んで体勢を低くした。
『俺がお前を向こうのビルまで跳ばす。…受け身だけを考えてろ。』
OK?と簡単に言う右京にクリスは一拍置いて『わかった』と答えた。
右京にライフルを渡して助走の為に距離を取る。
振り返ると右京が『いーぞー』と手を上げた。
『……いーぞーって……』
文字通り“手を貸す”右京をクリスは殴りたい衝動に駆られた。
…落ちたら受け身もクソもない状況だな…
深呼吸して雑念を祓う。