とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




ビルとビルの間は約5m程。




平坦な所なら余裕で跳べる幅だ。




『大丈夫…。跳べる…。』




たかが5mじゃないか!




途中地面までの距離が20mになるだけだ!




…20m…




クリスは異様に喉の乾きを覚えた。




『おい、早くしろよ…』




右京がちょっと苛立っている。




それが判り、クリスは“クルースニク”としてのプライドが傷付いた。




『チッ…!!…舐めんなって!』




走り出したクリスを見て右京は差し出した腕に力を込めて構えた。




クリスの足が腕にかかる。




完璧な跳躍のタイミングで右京は彼の足を思いっきり押し上げた。




予想以上に体に浮遊感を感じた。




尚且つビルの谷間から絶妙な強さの風が吹き上がる。




それは自分を包み込むように向こう側まで運んでくれた。




なんだ…全然怖くないじゃないか…。




クリスは着地の衝撃を前転して和らげた。




右京もそれを見てビルの谷間を軽々と飛び越えた。




クリスは右京に声をかけようとしたが、『急げ!』と言う右京の言葉に頷く。




彼は物凄い速さでビルの端まで行くと、長い足を滑らせてザザァーッ!!とブレーキをかけた。




< 259 / 461 >

この作品をシェア

pagetop