とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ビルとビルの間は約5m程。
平坦な所なら余裕で跳べる幅だ。
『大丈夫…。跳べる…。』
たかが5mじゃないか!
途中地面までの距離が20mになるだけだ!
…20m…
クリスは異様に喉の乾きを覚えた。
『おい、早くしろよ…』
右京がちょっと苛立っている。
それが判り、クリスは“クルースニク”としてのプライドが傷付いた。
『チッ…!!…舐めんなって!』
走り出したクリスを見て右京は差し出した腕に力を込めて構えた。
クリスの足が腕にかかる。
完璧な跳躍のタイミングで右京は彼の足を思いっきり押し上げた。
予想以上に体に浮遊感を感じた。
尚且つビルの谷間から絶妙な強さの風が吹き上がる。
それは自分を包み込むように向こう側まで運んでくれた。
なんだ…全然怖くないじゃないか…。
クリスは着地の衝撃を前転して和らげた。
右京もそれを見てビルの谷間を軽々と飛び越えた。
クリスは右京に声をかけようとしたが、『急げ!』と言う右京の言葉に頷く。
彼は物凄い速さでビルの端まで行くと、長い足を滑らせてザザァーッ!!とブレーキをかけた。