とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
クリスが訝しげにこちらを睨む。
右京はクリスの肩に手を置いて“大丈夫”とアイコンタクトを送る。
『但し、条件がある。お前は生きる為には血液が必要だ。その為に人間を犠牲にするな。』
『おや、酷な事を言いますね…私に飢えろと?』
『そんな事は言ってない。“犠牲”にするなと言ったんだ。』
右京の言いたいことを理解したクドラクは大口を開けて笑い出した。
『なるほど!頭が柔らかくて助かる。さすがウリエル様だ!』
それを見たクリスが『どういう事だ?』と右京に尋ねた。
『バンパイアの吸血行為はただの“食事”だ。別にストリゴイを増やさなくても可能なハズだ。』
『…なんだって?』
『無知なクルースニクよ…だから人間は愚かだと言うんだ。』
『それに何もその食事は人間じゃなくても可能……だろ?』
右京の言葉にクドラクは肩を竦めた。
『…本当なのか?』
『ああ、本当だ。じゃなかったら人間界は大半がバンパイアになってる。』
クリスはまだ半信半疑だった。
『仮にそうだとしても、また人間を襲う可能性があるだろ!?』
右京は『そうだな』と頷いた。