とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『…じゃあ、俺の血をくれてやるよ。それでお互い納得出来るだろ?』
考えてもいなかった右京の発言にクリスと、クドラクまでもが目を見開いた。
『…正気か!?』
『ん…構わない。クリスは俺に銃口を向けてろ。豹変したら撃てばいい。』
『フフフ…これは嬉しい申し出だ。』
目を輝かせるクドラク。
クリスは混乱する。
─どうする!?…右京を撃てるはずがない!
クリスは舌打ちをして迷わずクドラクに銃口を向けた。
ニヤリッと笑うクドラクの眉間目掛けてトリガーを引く。
ふとクドラクの姿が消え、後ろの壁に銀弾がめり込んだ。
『…愚かなクルースニク。そこで黙って見ていろ…』
気配を感じて振り返ると右京の真後ろに立つクドラクにクリスは銃を向けた。
─これじゃ右京まで巻き添えだ…!
『大丈夫だ、クリス。』
至って冷静な右京にクリスは眉を寄せる。
『熾天使の血とは…ありがたい…』
右京の首に手を掛け、クドラクは囁くように耳元に口を近付けた。
『勘違いするな。俺はもう熾天使じゃない。』
右京の首筋を舐めるとクドラクは鋭く尖った牙を突き立てた。