とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
跳ね上がる心拍数…。
クリスは手が震えて照準が定まらず舌打ちをする。
旨そうに血を喰らうクドラクを右京は冷たく睨み、チラッとクリスに目を向けた。
─問題ない。
彼の目がクリスにそう言っていた。
右京は不思議な感覚に陥る。
牙を突き立てられた痛みは直ぐに消え、甘い痺れを感じる。
『…もう充分だろ?』
そっと口を離してよろけるクドラク。
『…なんだ…この血は…』
クリスはその光景に目を疑う。
ケロッとしている右京と、まるで酔っ払っているように覚束ない足のクドラク。
『こんな血は初めてだ…』
『悪かったね~…不味くて』
フンッと鼻を鳴らす右京にクドラクは『違う』と答えた。
─まるで“麻薬”だ…!
額に手を当てて椅子に座るとクドラクは呼吸を整えた。
『う…右京…!大丈夫か?』
『大丈夫だ。なんともない。…あっちは駄目そうだけど…』
予想外のクドラクの反応にクリスも首を傾げた。
『おい、しっかりしろよ?まだ肝心な事聞いてないんだから…』
『ああ…そうだった…』
クドラクは少し虚ろな瞳で右京を見た。