とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
クドラクの様子にクリスも戦意を喪失したらしく、銃をホルダーに収めた。
右京はクドラクを覗き込むように腰を落とした。
『で?ルシファーの次の狙いは?』
『…“契約の箱”だ。』
『契約の…箱…?』
『なんの事だ?』
右京はクリスの問いに『聖櫃だ』と答えた。
通常“聖櫃”は“証の箱”と言われ、旧約聖書では十戒が刻まれた石板が納められている。
だが、クドラクが言う“契約の箱”はただの聖櫃ではない。
『その櫃に何が入っているんだ?』
『それは…』と右京が言いかけた時、不意に今まで不通になっていたインカムからピッと言う機械音が聞こえた。
『…結界が解けた…?』
右京とクリスは顔を見合わせ、クドラクを振り返る。
『…こりゃ参った…集中力どころか、起きているのもシンドイ…』
崩れ落ちそうになったクドラクをいつの間にか側に居たストリゴイの男が抱き抱える。
『すまないが、今回はこれで失礼する…ウリエル様、また近い内に…』
『俺は“右京”だ。ウリエルは居ないモノと思え。』
それを聞くとクドラクは微笑みを浮かべ、ストリゴイの男と供に姿を消した。