とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
事務所を立ち上げて一番最初に来た仕事は、昔の同僚…つまり刑事時代の同僚からの依頼だった。
彼は交通課の警部で、アンダーソン同様“仕事人間”だった。
妻には愛想を尽かされ、その為娘は家に帰らず柄の悪い友達と遊び呆けていた。
そんな娘がある日フラリと家に帰って来た。
正確には家の前で仕事から帰って来る同僚を待っていたらしい。
そんな事は初めてで彼はかなり驚いた。
そして彼女は父親である彼に『パパ、今までごめんなさい…愛してるわ』とだけ言って夜の街に消えた。
同僚はその時の娘の顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。
迷いに迷って彼は少年課の知り合いに相談した。
『娘さん、19歳ですよね?その位の歳の子にはよくある事です。な~に、お金が無くなればまた帰って来ますよ。』
少年課の同僚にそう言われてまともに取り合ってもらえず、不安ばかり募さらせた。
そんなある日、定年退職したアンダーソンの噂を聞いて訪ねてきたのだ。
『警察に居ながら警察が信用出来ないんだ…。』
それが久しぶりに会った同僚の言葉だった。