とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
確かに警察には失踪事件が日に何十件と舞い込んで来る。
その全てに親身になる警官は少ない。
自分も昔少年課に配属になった事があるから判る。
適当にあしらう先輩刑事にまだ若かったアンダーソンは『何故ちゃんと捜査しないのか』と聞いた事がある。
すると先輩刑事は何を言ってると言いたげにこう答えた。
『何故って…ただ居なくなっただけで、事件は起きてないじゃないか。』
警察とはそんなもんだ。
何か起きないとその重大さに気付かない。
いや、面倒だから気付かないフリをするのだ。
アンダーソンは気の毒な同僚に『やれる事をやってみるよ』と二つ返事で依頼を引き受けた。
だが、失踪事件の大半は長期戦になるのも否めない。
『あくまでも私は探偵だ。調べてみるが何せ自分独りだ。あまり期待はしないでくれ…。』
申し訳なさそうにアンダーソンがそう言うと、同僚は涙ながらに『ありがとう』と繰り返した。
その後時々舞い込んで来る依頼は全て失踪事件だった。
その異様さにアンダーソンは頭を抱える。
20歳前後の女性…
派手な交遊関係…
突然の失踪…
共通点がありそうで全く無かった。